独占欲





 彼女の我侭は些細なこと。
 単にクラスメイトの皆でプールに誘われた。
 それだけ。
(でもねえ・・・・)
 心の広い大人としては、許すべきなんでしょう。
 嫌な顔一つせずにね。
(その君のクラスの数人が、君を好きって知ってますからねえ・・・・・)
 本当は許すべきなんでしょう。そう思うけど。
 教師って、妙な立場だ。
 教師でなければ、知らないから許せたかも。
 でも知って、それで「いい」なんて言えなくて。
 それに僕は心が狭い。
「・・・・・・じゃあやめる」
 ぷいっと素っ気無く、君は正面を向いてしまう。
 表情を消した横顔。
 綺麗な、無機質な、それでいて僕を誘う桜色の。
「行きたいんでしょう?」
「気が進まないんでしょ?」
「・・・・・・・ええ」
 だけど。
「君が行きたいというなら、止めませんよ」
 希望は言う。
 だけど、それだけだ。
 それ以上は君次第。
 君を束縛したいわけじゃなし、それに君は僕だけのものだって、君は信じさせてくれるから。
「・・・・・・・見栄っ張り」
 にゅっと望美さんの腕が伸びてきて、僕の鼻をつまむ。
 その白さに抵抗を忘れた僕は、腕の先の、見えそうな柔らかい部分に気を取られてしまう。
「・・・いいよ?弁慶さんが行くなって言うなら、行かないから」
 彼女は不思議に柔らかく微笑んで、その甘さに、溺れてしまいそうになる。
 ・・・・・・プール、ですか。
 察するところ、別に誘われたから言ってみただけで、行きたいわけじゃないのかな。
(・・・・・いや)
 行きたいのでしょう。
 望美さんは、アクティブだから。
 僕だって別に、プールそのものを反対したいわけじゃない(いや反対したいですけどね)。