とろける籠絡







 敦盛は混乱した。
「……っ」
 目が覚めると二つ枕で、手を繋いで望美が目の前で眠っている。
 思わず声を出しかけて口を噤んだ。
 起こしてはいけない。
 しかし、振動は伝わってしまったようで、望美は小さく身じろぎした。
 ゆるゆると瞼がひらいてゆく。
「あつ、もりさん?」
「あ、ああ……」
 寝起きの掠れた声に、敦盛の胸が高鳴った。
 敦盛の心中も知らず、望美はふわりと笑う。
「寝ちゃいましたね……」
「その、すまない、……手を」
 敦盛は望美から手を離してもらおうと、顔を赤くして主張するように繋がれた手を持ち上げた。
 望美は少し悲しくなる。
 繋がれた手が嬉しかったのに、一番にそれ?
 望美はぼうっとしたまま、小さく首を振った。
「離すの、嫌です…駄目?」
「だ、駄目ということは……ないが」
 わかっているのだろうか、と思う。
 仁和寺の帰り、自分は望美を想っていると告げてしまったようなものなのに。
 その自分と手を繋ぎ、一つ寝具で眠るということがどういうことか。
 ―――きっと分かってはいない。
 想っているだけでは抱えきれなくなってきたこの想いに、気づいていたら、きっとこんな風に傍にはいてくれない。
 愛しい人は、時に残酷だ。
「……もっと、触れてしまうかもしれない」
 熱を帯びた言葉は、望美が夢うつつであると信じたから言えた言葉だった。
「きっともっと触れたくなる……」
 言葉にすると、自分の欲が身に沁みる。
 怨霊の身だからと自制していたのに、振り返ればそれはただの口実だった。