星の降る音





冒頭/キス×スキ×キスより〜



 敦盛が現代に残ったのを一番喜んだのは勿論望美本人だが、一番歓迎したのは有川家の主婦かもしれない。
 言うまでもなく、将臣・譲の母、恭子である。
「かっ・・・・・可愛い!」
「あ、えっと、あの・・・・」
「ちょっとどこの子?・・・・・えっ、うちの子になる?やったー!」
 ・・・・・という具合で、敦盛の落ち着き先はあっさり決まった。
 譲は「この家に住ませていいか」程度で聞いたが、いつの間にか「うちの子」指定。
 当然のように望美・母も盛り上がり、そのミーハーぶりをよく知る父が反対なぞするわけもなく。
「い、いいのだろうか・・・・」
「いいんじゃね?」
「まあっ、よく似合うわ!」
 敦盛の戸惑いを置き去りに、高校への編入まで決定。・・・・・・いつの間にか制服まで用意されていた。
 そうして最初の冬は瞬く間に過ぎ、季節は春。
 望美には大きな問題が待ち受けていた。




抜粋/君を想うより〜



 もうすぐ、夏の星座。
 過ぎ行く春。今年はあなたと、桜が見られなかった。
 そう言うと彼女は、大泣きしそうなほど顔を歪めて、来年はきっと、と約束をせがんだ。



 ああ、やはり泣いたのだな。と、どこか遠いところで敦盛は考える。
 きっと泣いたのだ。きっととてもたくさん。
 神子は優しい人だから。
 怨霊でさえも、その優しさのもと、斬って、浄化してくれた人だから。
 あの手で浄化されるならそれもいい。
 そう思って。
 いやあの手がいい。
 そう変わって。
 あの手を取りたい。
 そう考えたとき、それを許さぬとでも言いたげに、あのわざわいは渦巻いて。
 これもさだめか。そう信じたときに、あなたへの未練が残らなければ、この体は消えていただろうか。