小悪魔な彼女





 その場は凍りついた、気もする。
 だけど、それは素直な感情の発露だった。
 好奇心はあったけど、相手なんていないし。
 でも、してみたかった。
 キスを語る級友の顔は、本当に可愛くて幸せそうだったから。
 将臣の奥、譲が無言の悲鳴をあげたのが見える。
 少し面白い。
 そしてちょっとドキドキする。
 将臣が固まったまま、真顔で自分を見つめているから。
 望美はちょっと不安になる。
(将臣君は嫌なのかな。うんって言っちゃ、いけなかったのかな)
 いつも我侭を叶えてくれた幼馴染たち。
 今度は駄目、なのだろうか?
 そう望美が考え始めたとき、将臣の手が望美の頬に伸びて、軽く触れた。
「俺たちで、いいのかよ」
 よかった、将臣は分かってくれた。
 望美は安堵する。
 将臣だけじゃないのだ。譲とも。
 どっちもと、したい。
 だってどっちも好きなんだもの。比べられないくらい。
「うん」
「お、俺たちって・・・兄さん!」
 譲が真っ赤な顔で焦った声を出す。
 どうして焦るのかな。
 望美は将臣に頬を触れられたまま、小首を傾げる。
「譲君?」
「――――譲が嫌なら俺が独り占めするけど」
 少しだけ振り返って将臣が言うのに、譲はぐっと詰まった。
「・・・・っ、俺だって、先輩が好きだ・・・!」
 はからずも、将臣の気持ちまで暴露して譲が将臣の反対側に豪快に腰を落とす。